季節の畑から
かるべけいこの梅干し
思わず唾液が出てくる絶妙な酸味と香り
土用の季節になると天気が気になって仕方がありません。晴天が続く日を見計らって玄関前に置いたざるの上に、梅酢につかった梅の実を並べていきます。一晩一晩夜露を浴びて涙を吹き出す梅の実が美しく。だんだんと干し始めは様々に混ざった色合いの梅たちがすっかり赤く染まってくることに感動してしまいます。それにしても梅干しというのはどうしてこんなにも味覚を刺激するのでしょう。体験上、それが凄く酸っぱいものだと分かっているのに視覚と嗅覚で近くにいるだけで唾液が反射的にでてきます。梅肉エキスに代表されるように昔から民間療法でも梅は貴重な存在。日本人には欠かすことのできない食べものですね。我が家ではとんかつでも唐揚げでも肉料理には一緒にご飯と梅干しを頬張るのが大好きで、陰陽のバランスをしっかりとってくれる気がします。
かるべけいこの
切り干し大根
蒸し干しが醸す風味と甘味
僕は畑に少ない時でも500本ほどの大根を植え付けます。その大根は煮物でつかう短くて太くて煮崩れしにくい品種のものです。甘味がそもそも強い品種ですが、真冬は日中でも零下になる南阿蘇の九州離れした寒暖の差がつくる大根は甘味がものすごく乗ってくれます。正月を越え、大根の葉が雪や霜でボロボロになってきたあとも畑に残っている大根を抜いては切り、蒸しては干しを繰り返してかるべが切り干し大根にしていきます。この地方では元来蛇腹切りにした大根をそのまま軒先に干すのが標準なのですが、我が家は手間をかけて蒸し干しにします。ごらんのように飴色になるのは蒸し干しならではで、天日のおかげで戻した時の量とふっくら感が格別になります。調味は少しの醤油で充分、一年中楽しめて栄養が豊富なのがありがたいです。
たくあん漬け
寒冷地阿蘇ならではの絶妙の干し上がり
生食と切り干し大根用以外に僕は畑に沢庵用の大根を植えています。これは細長くで真ん中だけが膨らんだ沢庵用の品種でこれを軒先に干して頭とお尻が曲げてくっつくくらい、しっかりシワシワに干し上げます。杉樽にしっかりと敷き詰めて、米ぬかと塩と昆布、唐辛子を中心に林檎と柿やみかんの皮などをいれて漬け込みます。我が家では冬の鍋で霜降り野菜の深い味わいを楽しんだあとに、残った出汁にご飯をいれておじやを作ります。その時にすごーく薄切り淡い黄色に輝いた沢庵をのせて一緒に食べるのが至福の時なのです。
野中ファミリーの
蔵出し味噌
2年寝かした麦味噌は深い味わいと香り
僕は大豆を作るのが、苦手です。それで我が家のクッキーなどに使う小麦粉をお願いしている熊本県山鹿市の有機農家の坂田さんにお願いして毎年大豆を仕入れています。それを毎年春先に麦麹と仕込んで麦味噌にして2年以上寝かせていただきます。裏民宿に来てくれた客人が朝ご飯で毎回味噌汁と一口飲んで唸る姿を見るのがなによりも嬉しい瞬間です。少ない年でも杉樽に200Kほど仕込みますが、手作業だけで潰すので大変です。しかし大豆がゆであがるまでの数時間家中に香ばしい香りが充満して、ゆであがった大豆をつまんでは口にいれるのがいつもの癖です。そのたびにやはり元の大豆が旨さが大切だなぁとしみじみ思うのでした。